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ルアン×吉田豪スペシャルインタビュー

今まで単独でのロングインタビューを受けたことがないルアンの初インタビュー。過去のこと、これからのこと、普段言葉数の少ないルアンが20歳になった今、思うたけを存分に語りつくす。インタビュアーはプロインタビュアー吉田豪氏。今まで関わりがあるようであまりなかった吉田氏とルアンの初共演ともなる。

(収録2020/11/04発売「【CQ#200 映画史】公式パンフレット」

ルアン「(吉田豪さんの着ているTシャツを見て)あ、Bauhausだ(※1979年にデビューしたイギリスのロックバンド)」

 

吉田豪「これ、Bauhausのアルバムジャケットをパロディしたアメリカの怪奇派プロレスラーのTシャツなんですよ。Danhausenっていう。ちなみにルアンさん、ソロのロングインタビューは初めてですか?」

 

ルアン「初めてです。いつもインタビューはゆっきゅんとやっていたので」

 

吉田「しかも、ゆっきゅんがかなり喋るから(笑)」

 

ルアン「そうですね、私が喋らなすぎるのもあるんですけど(笑)。それでいつも相槌とかうっていれば終わるので、今日は緊張しています」

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----------"好きな映画は『羊たちの沈黙です』"

吉田「ボクもルアンさんに興味はあるんですけど情報が全然ないので、お互い探り探り初めていきましょう。まず、ルアンって本名なんですよね。あんまり本名で活動している人、この界隈にいないですけど」

 

ルアン「前のグループでアイドル活動をはじめたときどう名乗ろうかなと思って。本名は漢字ですけどカタカナにして、そしたらいい感じに芸名っぽくて。自分の名前、すごく気に入っているんです」

吉田「どんな家庭環境だったんですか?」

 

ルアン「父と母、それと3人姉弟で、5つ上の姉と3つ下の弟がいて、私は真ん中なんですけど、姉弟みんなそれぞれ好きな音楽関係の事をやっていますね。姉が昔バンドをやっていて時々DJをしたり、高校生の弟もバンドでギターをやっています。私は私でこういうアイドル活動をやっていて」

 

吉田「お姉さんから音楽的な影響を受けた感じなんですかね」

 

ルアン「そうですね、姉と母がよく音楽を聴く人で」

 

吉田「お母さんも?」

 

ルアン「はい、母がTheピーズとかすごい好きです」

 

吉田「バンドブーム世代だ!」

 

ルアン「バンドブーム世代ですね。そこで教えてもらった音楽を小学校高学年くらいから自分で探っていったりして。本の趣味とかもそんな感じで、いまに至ります」

 

吉田「家に大槻ケンヂさんの本があるパターンですね(笑)。それで読書なり映画なりの趣味の原型ができていった、と」

 

ルアン「そうですね。そういった経緯で自分の好きなものが確立されていきました。”これ良いから一緒に見ない?”と誘われて母と映画を一緒に観にいったり。それこそ私の好きな映画が『羊たちの沈黙』なんですが、それも母に教えてもらって観たのがきっかけです」

 

吉田「レクター博士! 子供に観せる映画じゃないですけどね(笑)」

 

ルアン「母は公開当時、観にいったらしいです。私も最初は怖かったんですが、見ていくうちに夢中になって”お母さんセンスいいな”って(笑)」

 

吉田「たぶんお母さん、ボクと同じ世代ですね」

 

ルアン「そうだと思います。ファッションも母からの影響が大きくて。『Olive』とか『Spoon』とか『Cutie』とか」

 

吉田「じゃあ、平和にサブカルチャーを摂取されてきたんですね。家庭内や学校に居場所がなくて、そういう文化にハマっていったとかじゃなくて」

 

ルアン「そうですね。小学校でも友人はそれなりにいて、女の子とも男の子とも先生とも仲が良かったです。とくに明るくてみんなと仲良しみたいな生徒ではなかったのですが、自分の趣味はちゃんと守って」

 

吉田「めちゃくちゃ平和ですよ。そういう髪型をしている子は基本、社会に居場所がなくて周囲と壁がありがちなのに(笑)」

 

ルアン「友人や周りの環境に恵まれたんだと思います。私の趣味に興味を持ってくれたりとか、理解してくれる人が多かったので」

 

吉田「クラスの主流派みたいな人たちの趣味に合わせることもできた?」

 

ルアン「できる方だと思います(笑)。私は流行の音楽や文化に疎いんですけど、自分の知らないことを知るのが好きなので、友達に教えてもらったりとも多かったですね」

 

吉田「一緒にカラオケとか行ったりとかもなんの問題もなく?」

 

ルアン「できましたね。”何この曲?”みたいなことは散々言われるんですけど(笑)」

 

吉田「学校ではどんなポジションだったんですか?」

 

ルアン「あんまり中心にはいなくて、自分から仲良くしにいくとかはあんまりなかったんですけど、隅っこの方で私が絵を描いていたりすると周りの人が集まってきたりして」

 

吉田「休み時間に絵を描くタイプ」

 

ルアン「絵を描くの大好きで、小学校の頃は休み時間にずっと絵を描いたりしていました。それでクラスメイトが興味を持ってくれて仲良くなること多くて」

 

吉田「絵が交流のきっかけなんですね。アイドル的なものには興味があったんですか?」

 

ルアン「実はいまもなんですがアイドル、詳しくないんですよ。どちらかというとバンドとかの方が好きだったりして。なので自分がいまアイドルをやっているのも不思議な感じです(笑)」

 

吉田「音楽はどういうのを聞いていたんですか?」

 

ルアン「学生時代は姉の影響で毛皮のマリーズ、森田童子、おとぎ話とか。行きつけの古着屋のオーナーさんにお借りして寺山修司さんの『天井桟敷』のサントラとかも聴いていました」

 

吉田「毛皮のマリーズは、まだなんとか周りとの接点がありそうですけど、森田童子や寺山修司は……(笑)」

 

ルアン「そうですね(笑)。ほとんど年上の人ばかりでしたが」

------------"なんなんでしょうね、この平和な感じ(笑)"

 

吉田「つまり、電少に入る前から電少っぽい人だったんですね」

 

ルアン「好きなものは当時から変わっていないので、そういう部分では現在に繋がってるんだと思います」

 

吉田「なんでそういう人がアイドルをやることになったんですか?」

 

ルアン「もともと色々な活動をしていた友人が前グループ(時効国家)のプロデューサーさんにアイドルをやらないか誘われていて、友人経由で私も紹介していただいて加入する事になったのがアイドル活動を始めたきっかけです。教室で皆の前に立って喋るのもできないくらい、人前に立つ事が苦手な人間だったんですけど。そこで人前に立って表現するきっかけを与えられて、"ちょっと面白いかも?"と直感的に思いました」

 

吉田「アイドル知識は全然ない状態で?」

 

ルアン「そうですね。一緒にアイドル活動をはじめた友人も私も、そういった知識はほぼなかったと思います。ただ、この子と一緒なら心強いから大丈夫かもって」

 

吉田「当然、地下アイドルと呼ばれる文化も分からないまま」

 

ルアン「なんとなく地下アイドルブームというのは知っていたんですけど、具体的にどのグループが人気かとかそういう前知識はなくて、そのままこの世界に入りました」

 

吉田「戸惑いとかはなかったんですか?」

 

ルアン「特になかったです。両親に相談した時にも”いいんじゃない? やりたかったら全然やってもいいと思うよ”って感じだったので。新しい自分がそこで見つけられたら面白いなと思いました」

 

吉田「じゃあ、全く無理することなく、アイドルをやれてたんですかね?」

 

ルアン「本当に無理することがなかったですね(笑)。入るために苦労もしなかったし、レッスンが辛いとか、人間関係で悩みとかもなかったです。細かいことはもちろんありますけれど、それもあんまり個人的なことでもないので、それで考え込むとかもなかったし…」

 

吉田「なんなんでしょうね、この平和な感じ(笑)」

 

ルアン「なんなんでしょうね(笑)」

 

吉田「地下アイドルといえばトラブルがつきものなのに、“こんな苦労をしました”とか”こんな壁にぶつかりました”とか話を盛り上げるようなエピソードがない(笑)」

 

ルアン「普段からなるべく壁にぶつからないように生きているからですかね…(笑)」

 

------------"歌もダンスも人前に出るのも苦手でした"

吉田「歌やダンスもそこそこ最初からできていた?」

 

ルアン「最初は相当苦手でしたね。上手く歌えないし踊れなくて嫌だったんですけど、でもそれって練習すればどうにかなることだし。上手くはないけど歌うことは好きだったので」

 

吉田「お客さんとのコミュニケーションとかも、なんら問題もなく?」

 

ルアン「私、本当はかなり人見知りなんですよ。人と話すのは大好きなんですけど。チェキ会とか、最初はもちろん全然知らない人達が来るわけじゃないですか。最初の頃は慣れなくて大変だったんですが、やっていくうちに人見知りも改善されて。それで鍛えられて今も接客業(HEIHEI)が出来ているんだろうなと思います」

 

吉田「最初からアイドルに対して過度な思い入れもなかったから、なんか思ったのと違うとか感じることもなかったんですかね」

 

ルアン「そうなんだと思います」

 

吉田「時効国家での活動はどれくらいの期間?」

 

ルアン「半年くらいでした。その間に高校受験とかもあったので、私はライブ10回もやっていないし、音源も出していなくて。なので幻のようなグループでしたね」

 

吉田「ボクは生で観たことないんですけど、時効国家はどの辺界隈だったんですか?」

 

ルアン「アイドルと対バンが少なくて、バンドとか多かったので特にこの界隈というのはなかったですね。どちらかといえばサブカル系の界隈だったと思います。あとは少女閣下のインターナショナル(※電影と少年CQスタッフが以前運営していたアイドルグループ)のファンの方が見に来てくれたり(笑)」

 

吉田「時効国家はどうして解散しちゃったんですか?」

 

ルアン「それについては何も言えなくて……。ファンの方にすごく申し訳ないと思っていたんですが、でもその頃のファンの人たちが今でもたくさん電少に通ってくれているので嬉しいです」

 

吉田「おそらく地下アイドル特有のゴタゴタみたいなことを体験したんだとは思いますけど、それでもうこの業界は嫌だとかは思わなかったんですか?」

 

ルアン「これからのことを考えた時に、当分はステージに立つのはいいかなと思っていました。普通の高校生になろうかなって。でも、そのとき知り合いの人から“少女閣下のインターナショナルを運営していた人たちが、電影と少年CQってグループを立ち上げるみたいで、ルアンちゃんのこと気になっているようだから話を聞いてくれない?”って連絡がきて、まあ話を聞くだけだったらって思って。あと、それより前に電少メンバーの募集ツイートがtwitterで流れてきて、それを見て面白そうだなあとは思ってて。で、ちょうどいま話しているこの珈琲西武(※新宿にある喫茶店)で電少のスタッフ2人と、TRASH-UP!!のシマダマユミさんからお話を伺って、それで”あ、いいかも”って思って。まだメンバーも他に決まっていなかったんですけど」

 

吉田「その時点では男女2人組だとは決まっていたの?」

 

ルアン「その時は女の子3人組を予定しているみたいな話でした。もしかしたら男の子が入るかもみたいな話は出ましたが。映画っていうコンセプトと、あんまりアイドルっぽくないっていうのが面白いなって思いました。どちらかというと私は明るく踊って歌うのが苦手な方なんで(笑)  あと、そのとき『列車の到着』って私たちのデビュー曲を聞かせてもらって良いなと思ったので、そのあとすぐに“入ります”とお返事をしました」

 

吉田「女の子3人組と言われていたグループが、そうじゃない流れになっていくことについてはどういう風に見ていました?」

 

ルアン「特に違和感はなかったです。最初はゆっきゅんと2人で始めてすごくやりやすかったんですよね。活動開始後も3人目のメンバーを募集はしていて、でも今のこの2人の方がいいんじゃないかなあって。ゆっきゅんとは相性が良かったんですよね。結局それで3人目は入れなかったし、それからずっと2人でやっているんですけど、この2人で良かったなあって思っています」

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